「ネイティブ広告ハンドブック2017」というのがJIAA、日本インタラクティブ広告業界から公開されてそれについてひと悶着あったので書いておきます。
※業界以外の人は読んでも何も面白くないと思います
ネイティブ広告ハンドブック2017
http://www.jiaa.org/download/JIAA_nativead_handbook.pdf
このハンドブックではいわゆるネイティブ広告についての解説と、「こうやって運用した方が良いよね」「ステマはダメだよね」みたいな事について書かれているのですが、このハンドブックに対してライターの方々から感想が投下されます。
くちきんがシェアしてた「ネイティブ広告ハンドブック2017」が取扱説明書レベルに読解大変で涙ですhttps://t.co/a1R7Y64Cv1 pic.twitter.com/7nTVNPqmVg
— 塩谷 舞(しおたん) (@ciotan) 2016年11月7日
ネイティブ広告の件は、ステマの件で個人的に昨年から追いかけている話題なので、一通り目を通し、理解したと認識した上でシェアしました。一方で、先に挙げた医療の例のように、そもそもガイドライン的なものが読みにくいという意見もあると思っています。その意見には「読みにくいよね」と答えます。
— 朽木誠一郎 (@amanojerk) 2016年11月8日
これらのツイートに対して広告業界のえらい人たちがバッシバシツイートを投下。
これが難解と言われてしまうとね。。。 https://t.co/9zhMN6vzY4
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月7日
プロのライターとして、企業のコンテンツづくりに関わるなら、JIAAの「ネイティブ広告ハンドブック2017」は必読なはず。それが、難解だと言うライターは失格だし。仕事を出してる企業も問題。ライター勉強会とか、稼ぐとか、イベントたくさんあるけど、基本的なこと出来てなさすぎなんじゃ…
— 藤代裕之「風の人」重版出来! (@fujisiro) 2016年11月7日
@ciotan 業界人辞めたら?
— 玉川俊哉 (@TwittyTama) 2016年11月7日
みたいな。あとはこのトゥギャッターにまとめられてるものもざっと見ておくといいかもしれない。
この「ネイティブ広告ハンドブック」の内容については、確かに「業界人なら読んでおくべき」って内容である事は間違い無いのですが、その一方で「読みづらい」という声が挙がった事に対して「読めないお前が悪い。勉強不足」という論調で一方的にやっつけるのは少し違うんじゃないかと思うのです。
これに違和感を覚えたので僕が自分のFBで以下の文章を投下しました。
【むかついたから書く】
「ネイティブ広告ハンドブック2017」の事である。
http://www.jiaa.org/download/JIAA_nativead_handbook.pdfこの内容についてライタークラスタの人々が「読解が大変」「難しい」などと呟いたところ、ギョーカイの(恐らくは)偉い人達から「お前もプロなら最低限これくらい読解出来るようになれ」「最近の若手はこんな程度か」「レベルが低すぎる」「これが難解ならライター失格」みたいな、けっこう辛辣なワードがボッコボコ飛び出したのだ。
これについて反論する。
僕はこの「プロなら読めて当然だろ」みたいな、受け手のリテラシーに丸投げするようなやり口が大嫌いで、特に広告まわりには何故かこういう人達がたくさん沸いて出て来るのが不思議でしょうがないなと常日頃から思っているのでこの際に書いておきたい。
・難解な文章でもすらすら読めるようにライターは努力すべき
という論はわかる。
そりゃまあ読めないよりは読める方が良いよね、という一般論的な話だ。
ただ、今回の場合はそれと同時に、
・発信者側もなるべく多くの人に理解されるようにコンテンツを作るべき
というのも成立するはずで、「読めない」というライターだけを一方的に批判するのはどう考えたっておかしい。だって、この「ネイティブ広告ハンドブック」については業界関係者以外も理解しておいた方が良いに決まっているからだ。
ネイティブ広告に触れるのは読者であり消費者であって、それが適切に展開されているのかどうかの判断基準はその消費者達も持っていた方が良いに決まっている。大多数の消費者がこのガイドブックの内容を理解していた方が、業界の適正化に寄与するのは明らかでしょう。飲料にくっついている成分表が難解で「業界の関係者なら読めるように」なっていたら困るのである。
そもそも、WEBメディア界隈は言ってしまえば素人がばんばん参入してくる業界でもある。大学出たての新卒がメディアの編集長をやってる事なんてザラにあるわけで、
そういう実情を知らないわけがないくせに、そういう人達でもスッと読めるような努力を放棄して「これだから素人は」みたいな目線で語るのは傲慢だし、最初から「業界関係者なら読めるでしょ?」「読んで当然でしょ?」という姿勢で来るのは発信者側のエゴでしかない。
ライター側はネイティブアドに対して理解する姿勢と、理解出来るまで読むという努力が必要な事を自覚するのと同時に、発信者側も「わかりづらい」という反応を真摯に受け止めて改善に努めるというのが同時に成立する事こそ、本来の適切な、業界のあるべき姿なのではないかと思った所存です。
以前電通の勉強会で「貴方達がこれまでにやってきたのは蹴鞠だ。選ばれた貴族が良くわからない言葉と良くわからないルールで良くわからない試合をしてきた。今まではそれでよかったのかもしれないけど、デジタルはそうはいかない」って言ったのはこの辺に対する批判も含んでおります。
という内容。
僕のスタンスとしては「広告に関わるライターは読む努力をしなくちゃいけないよね、でも発信者も『読みづらい』という意見は真摯に受け止めなきゃだよね。WEBの発展と共にメディアには素人もガンガン参入してくるからね」という感じです。
で、これに対して偉い人達からすると「そもそも業界人向けに作ったものだから、難しいなんて素人の意見にイチイチ付き合ってられん」っていう事なのかなって思ってて、まあそれはそれで一理あるかなとも思うんですよ。例えば医者向けの機関紙なんかに「難解だぞ。専門用語使うな」ってイチャモンつけるのは明らかにおかしいわけで。ただまあメディアの場合は免許制度があるわけじゃないし「今後も素人がどんどん参入してくる」っていうのが加わるのでややこしいわけですが。めちゃくちゃ人気のある大学生Youtuberとかも居るわけだし。
まあそんな感じで議論が進んで行くのかなーと思ってたのですが、その後僕のFB上で、その業界の偉い人と行われたやりとりが「あー、これは象徴的だなぁ」と思ったのでざっとまとめてみます。
まず一人目が高広伯彦さん。ギョーカイの偉い人だそうです。
議論している所に突然の哲学めいた問いかけ。
「なんぞ?」と思ったのですがとりあえず答えました。
何故かナチスドイツに例えられてしまいました。
そうなるとまあ、当然こう聞くじゃないですか。
ね。僕も答えたんだから。
そしたら返答がこう。
「フリーザかな?」って思った。
いや「僕に」とか言われても貴方が誰なのかそもそも知らんし。
これですよこれ。
これこそが「相変わらず蹴鞠をやってらっしゃいまんな~」って思うんです。
なんであれメディアに関する仕事をしている人は、マクルーハンをちょっとぐらいカジッて欲しいよね。著書をまるごと読めとは言わないけど、いい解説本は何冊もあるし。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月8日
まあそのマクルーハンについては知らなかった僕が無知なだけなんだろうし、その内読んでみようと思うのですが、「ギョーカイ人なら最低このくらいは読んでて当然だよね~」みたいな、そのサブカルオタクのマウンティング合戦的な思い込みが広告業界を変なモノにしてると思うんですよね。
その後も「どこを起点にするか」とかわちゃわちゃした問答があって、最終的に出た回答がこれ。
「メディアとは、何かと何かを繋ぐ、媒介するものである」だそうです。
最初からそれ言えっつーの!
っていう流れ。
モノ書きって、教養が求められるはずなんだよな、本来は。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月9日
ある領域のことを話してる際に、その領域について知識がないのに議論を起こしたり参加したりするのは罪に等しい。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月8日
その後もTwitterで昂っておられる。
そしてもう一人。
法政大学准教授の藤代裕之大先生。
例えばこれ。削除するかも知れんからスクショで貼りますけど、
こんなもん誰一人として言ってないからね。
「素人でいい」なんて誰も一言も言ってないし、
「わかりやすく説明しろ」も誰も一言も言ってない。
「難しかった」「わかりづらい」という指摘があったにせよ、
「もっとわかりやすく説明しろ」なんて誰も言ってないわけですよ。
「難解という声に対して耳を傾けるべきじゃないか」っていう問題提起はしましたけど。
それを勝手に自分なりに解釈して、存在しない発言をした存在しない人物に鼻息荒くケンカふっかけてるんだから「この人、頭大丈夫かな?」と思わざるを得ません。
そんなわけでそのあとにご自身で呟かれた事をよーく噛み締めて今後のTwitter活動に励んで頂ければと思います。
ね。事実と解釈を分けるのは基本だからね。
急に横から出てきて、「きちんと指導してください!」って謎の関西弁で偉い人の尻馬に乗る藤代さんの雄姿が見れるのはFBだけ!
あとはネットのリテラシーについても深い議論をしました。
とりあえず今回僕がやりとりをした人物2人を挙げたのですが、
僕がFBの本文中に書いた「蹴鞠をやってる」っていうのはまさにこの事だと思うんですよ。
ギョーカイの人がギョーカイの言葉でギョーカイのルールを作ってる上に、「俺たちはギョーカイ人なんだぞ!」っていう選民意識がめちゃくちゃ強い。だからダメなんだっての。
"自分よりも経験や知識がある人に対して「上から目線ですね」って言える人ってある意味すごいと思います”というある意見。僕で言うと長澤 秀行 (Hideyuki Nagasawa)や佐藤 尚之 (Naoyuki Sato)さんに「貴方上から目線ですね」って言うようなもの。怖いわ!w
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月9日
このご本人のツイートなんかにすごく表れてるんですけど、この高広さんなんか最初から「自分はインターネットのライターごときより経験も知識もある」っていう前提で来てるじゃないですか。
でも、言っちゃなんですけど僕は純粋な広告畑の人間じゃないからこの人の事なんて知らないんですよ。僕はサッカーで戦ってるつもりなのに、蹴鞠業界の偉い人に上から目線で来られた所で「いや蹴鞠やってないし」ってなるわけですよ。「え?飛燕旋風脚知らないの?」って蹴鞠の必殺技の名前出されても困るんですよ。「これが新しいルールだから球を蹴る人は必読でおじゃる~!」って言うから見に行って、そんで「難しい」って感想書いたら「これが難しいなんて球蹴り失格でごじゃる~~~!」って。勝手に決めんなって話です。
結局のところ『ネイティブ広告ハンドブック』の件で騒いでいらっしゃるのは、ネット系のライターの方々(の一部とその読者の一部)であって、で、「俺たちもコンテンツ作る側だから、俺たちも当事者。でその当事者が理解できないモノを書くな」、って主張であるという理解でいいかな?
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月9日
これも全然違うんですよね。僕は終始一貫して「俺」を主語にしてない。だって僕はまあ普通に読めたからね。「確かにしおたんはこれくらい読めた方が良いんだけどなぁ~」って思ったからね。でも高校生Youtuberで人気がある人が居るように、いわゆる素人がメディア界隈にガシガシ参入してくる時代になってるんだから、「難しい」っていう指摘に対して「読めないお前が悪い」っていう姿勢を取ってて良いんですか、って事を言いたいだけ。
弁護士や医者みたいに国家試験があってどこぞに認定された資格ならともかく、メディアなんて今や参入障壁が限りなく低いわけで、言った通りYoutuberみたいにいわゆる「素人」の学生が大きな影響力を持つことだってあるわけですから、そういう人達にもちゃんと理解して貰う方向を目指した方が良いに決まってるのに、そういう人達に対しても「マクルーハンも読んでないようじゃなぁ~」ってフカすんですか貴方は、って感じです。「正しい理解と普及」が大事なのに、それをマウンティングに利用して悦に入っててどうすんの、っていう。
「業界人なら」とか「プロなら」っていう言葉がこの人達がどうも好きみたいなんだけど、その「業界」とか「プロ」っていう、普通の人達を低く見るような姿勢があったからこそ広告が消費者に嫌われておかしくなってるんじゃないかなぁと思うんですよ。
今回の、
・読みづらいか、読みづらくないか
・わかりやすくあるべきか、あらざるべきか
っていう議論については言わば枝葉の部分で、根っこの部分の問題はこういう、ギョーカイの偉い人たちの傲慢さにあるんと思うんです。
実際、このハンドブックが読んでおくべき内容である事は事実だと思うので。ステマとか良くないからね!
しおたんも「勉強して読む」って言ってるわけですし。
まず現実的に、現時点でネイティブ広告をちゃんと理解してほしいのはライターさんたちではなくて、媒体のビジネスサイドの人々と広告主、代理店だからね。ライターさんや編集者については、ステマはあきませんよ、くらいで。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月9日
だからこそ最初からこれを言っておけばいいじゃん、って思うんですよ。
議論の時に「とりあえず広告主、代理店さん側に理解して欲しくて作ったものだから、ライターさんや現場の人向けにはどうするか今後考えていきましょう」って言えばよかったんですよ。それを「マクルーハンが~」ってブチ上げるからややこしくなっちゃう。
「このハンドブックは業界人向けに作ったものだから業界外の人は難しいかも知れないけど、業界で今後仕事するならわからない単語を調べながらでも読んでおけばいいよ」
くらいなら僕もイチイチFBに書いたりしないわけです。
広告・マーケティング業界って、どんどんレベルが低くなってきてる感じがするわ。
— 高広伯彦 Nori Takahiro (@mediologic) 2016年11月7日
言っちゃあなんですけど、こういう調子の人が業界の偉い人として上の方にデーンと鎮座してたらそりゃあ現場はやりづらいわ、って思いました。だって、議論しようと思ったら「君ィ、マクルーハンは読んだことあるかね!?」からスタートするんでしょ。こっちからしたら「何それ」って感じじゃないですか。「そんなに暇じゃないんですけど」って感じじゃないですか。
とは言え、まあこういう事例って広告まわりだけの話でもないんだろうな、と思うんですよ(広告まわりがひどいのは事実にしても)、ただし、たぶんどこの会社にも蹴鞠おじさんは居るんですけれども、そういう人って普通はまあ出世しないんですよね。だからこういう人達が偉くなっちゃう広告まわりがおかしいのか、もしくは登場した二人が別に広告まわりでも偉くないのかのどっちかだと思います。現場からは以上です。
【補足】
・「腹立ったらエントリ書いて保存してとりあえずそれでスッキリする」というメソッドでこのエントリを保存していたのですが、hagexさんが書いちゃったので公開する事にしました。
・例として「蹴鞠」を挙げてしまいましたが、「古くて、伝統があって普通の人が理解してないもの」の代表として挙げたので蹴鞠業界に他意はありません。気分を害す人が居たらすいません
・これを公開しちゃうと「ヨッピーもじゅうぶんややこしいやつだ」って言われると思いますけど、なんかほんと、すいませんマジで……。